大判例

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東京地方裁判所 昭和55年(手ワ)1196号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

二本件小切手を被告が振り出したかどうかについて検討するに、本件小切手である甲第一号証の振出人欄における被告の記名捺印が被告の印判、印章によつて顕出されたものであることは被告が認めるところであるから、反証のない限り被告の意思に基づいて記名捺印がなされたものと事実上推定され、ひいて本件小切手は被告によつて真正に作成されたと推定されるところ、本件に顕われた全証拠によつても右の反証があつたということはできない。もつとも、<証拠>によると、被告会社においては小切手の振出をすべて被告代表者みずからが行つているところ、被告代表者は本件小切手を作成した覚えがなく、本件小切手の金額欄及び振出日欄の記載も被告会社に備え付けられているチェックライター及び日付印によつてなされたものでもないというのであり、被告代表者は所轄警察署に本件小切手の盗難届を提出していることも認められる。しかし、被告代表者の供述によると被告会社では小切手帳及び社判及び代表者印を被告代表者が責任をもつて保管していて、小切手帳が盗まれたり社判や代表印が盗捺されるという機会があつたとは容易に考え難く、かつ、小切手帳の控えに関する被告代表者の供述は支離滅烈でとうてい措信するに足りない。そのうえ、被告代表者が本件小切手の決済について原告らと会談した際、被告代表者が善処する旨言明したことは同人みずから供述しているところである。ひつきよう、前記の反証はなく、本件小切手は被告によつて振り出されたものと推認すべきである。

三被告は、本件小切手の振出日が変造されていると主張し、前記甲第一号証の振出日の記載にやや不自然なところが認められ、本件小切手の控えであると認められる乙第四号証の三と対比しても、本件小切手の振出日としては、当初は昭和五四年二月一七日の日付印が押捺され、後に「一二月」と訂正されたのではないかと窺れないでもない。しかし、本件に顕われた資料のみによつては必ずしも右のように断定できるとも限らず、被告代表者の供述及びこれによつて成立の認められる乙第六、第七号証によると被告会社では先日付小切手を振り出すことも皆無ではないというのであつて、仮に本件小切手の振出日が二月から一二月と訂正された事実が存在したとしても、それが本件小切手の振出後に被告の意思に反してなされたと認めるに足りる証拠はないというほかはない。

(友納治夫)

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